ペイジの剣

前略ごめんください

2025/07/13

私は子どもの頃に5歳から15歳までピアノを習い、一時中断したのち、大人になってからも数年間ほど先生についてレッスンを受けました。


なので、クラシック音楽は好きなのですが、クラシック音楽が好きと言ってもピアノ曲かピアノ協奏曲ばかりになってしまうので、いわゆる交響曲をメインにしたクラシック音楽ファンというのとは違い、自分で弾くために勉強として聴く感じでした。もちろん勉強のためだけに限るのではありませんが。


私がとりわけ好きなピアニストはグレン・グールドです。他にもミケランジェリ、マガロフ、ホロヴィッツ、最近だとルガンスキーやブレハッチなども好きですが、やはりなんと言ってもグールドです。


子どもの頃は簡単な教則本から始まり、ブルグミュラー、ソナチネ、ソナタ、と進んでいきますが、その頃は主にハイドン、モーツアルト、ベートーヴェンといった古典派を中心に習うわけですから、ロマン派や印象派への憧れみたいなものがあって、思春期の頃などはロマン派や印象派ばかり聴いていました。


グールドはショパンなどのロマン派の曲をほとんど弾かなかったので(ロマン派嫌いで有名)、ロマン派好きの私がグールドの演奏に触れたのは大人になってからでした。


グールドのバッハを聴いた時は衝撃的でした。あまりにも美しくて。でもグールドのバッハは正統な弾き方ではないと知り、正統な弾き方はどんなものだろうと、リヒテルやポリーニの演奏を聴いてみました。リヒテルもポリーニも素敵なのだけど、どうしても私の中でのバッハはグールドになってしまいます。(でもまたリヒテルやポリーニを聴いてみようかな)


ロマン派の曲も良いけれど、大人になると、どういうわけかバロックや古典派の良さがわかってくるので不思議です。様式美的な調和のとれた音楽というのは、どこか鳥の声や風の音、はたまた宇宙(イメージの中で)など自然音のように聴こえてきます。バロック音楽は宗教的な音楽でもありますから、荘厳で神聖な感じがあり「暗闇に降り注ぐ光」という感じでしょうか。


ところで、ずいぶん前に買っていた『グレン・グールド書簡集』(みすず書房)をまた読み返していますが、本当にグールドは人としても魅力的だなと思います。ファンに対しても律儀に返事を書いていて、その返信内容もじつに真摯な向き合い方をされています。


中には株の証書をなくしたことや、スタインウェイの社員に背中を叩かれて(故意ではないらしい)腕を故障し、その後何ヶ月も演奏会に支障が出たことなど、さまざまな出来事を臨場感を持って知ることができるので、書簡集は貴重だなと思います。


もしご興味ありましたら、ぜひ読んでみてください。図書館には置いてあるかもしれません。


かしこ

 

『グレン・グールド書簡集』(みすず書房)より引用

私が腕を痛めたのは「転んだ」ためだと各紙に解釈させたのは、詳しい説明を避ける目的があったのも事実です。もし詳しく説明したら、スタインウェイ&サンズ社がおそらく恥をかくはめになりましたし、ニューヨーク・タイムズの限られた紙面を埋めるべく、必ずや貴社の当該社員の人物像を細かく描かざるを得なくなったはずです。(p61)


逆説的ですが、他者に喜びを与えるという芸術家の本質的な義務は、芸術的な満足をこの上なくナルシスティックに追求してこそ、最良の形で果たしうる。それが私の見解です。(p87ーp88)


十九世紀前半に書かれたピアノ曲()には我慢がなりません。メカニスティックです。これぞまさしく産業革命の産物であり、新たに進歩を遂げつつあったピアノの能力を発揮させるものですが、これはまた甘ったるいほど感傷的で、パーティー芸に満ちています。(p549)

ショパン、シューベルト、シューマンなどのロマン派のピアノ曲のこと