前略ごめんください
昨日、グールドについての手紙(7月13日の手紙)を書きました。バッハと言えばグールドと言われるように、グールドはバッハを中心に演奏したピアニストです。
またグールドは、19世紀前半のショパンやシューマンといったロマン派のピアノ曲については否定的であり、昨日の手紙にも引用したように「これはまた甘ったるいほど感傷的で、パーティー芸に満ちています。*」と批判的に書いた未完成で未投函の書簡が残っています。
*『グレン・グールド書簡集』みすず書房、p549
しかし、グールドはプロコフィエフ、シェーンベルク、スクリャービンといった後期ロマン派(の枠だけに留まるわけではありませんが)に属する曲は演奏していますし、批判しているショパンについても公式録音としてピアノソナタ第3番を残しています。後期ロマン派のシェーンベルクなどはポリフォニックな多声部からなる音楽構造をしているのでグールド好みなのではと考えられているようです。
そして、グールドは演奏会よりも録音やテレビ番組に力を入れていた人であり、テレビ番組の中で様々な曲を演奏しています。
私が心奪われたのはラヴェルの『ラ・ヴァルス』をグールドが編曲し演奏したものです。本当に素晴らしいとしか言えません。手持ちのCD音源にもグールドの『ラ・ヴァルス』は収録されていますが、演奏風景がYouTubeで見られるのは嬉しい限りです。
ラヴェルは印象派に属する作曲家で、印象派の音楽はグールドにとっては彼の理想とする音楽とは異なっていたと思われます。つまり印象派の感覚的・雰囲気的な表現は、グールドの理想とする構造的で知的な音楽とは異なっていました。しかし、グールドは『ラ・ヴァルス』を演奏しました。そして、それが実に素晴らしいのです。
各声部が独立しながら調和しており、オーケストラの曲をピアノ曲として演奏する場合にありがちな「調和のための調和(主観です)」とは違うものでした。どちらが良いとか悪いとかではなく、グールドの『ラ・ヴァルス』には立体的な音楽の宇宙を感じさせるものがあり、それが私には特別なものになったということです。
ということで、下にグールドの『ラ・ヴァルス』とハイフェッツが演奏するドビュッシーの『レントより遅く』の動画をご紹介しておきます。(突然のハイフェッツ登場‥‥笑)
私はオーケストラの『ラ・ヴァルス』も大好きですが、グールドの演奏する『ラ・ヴァルス』はそれを上回るくらいさらにさらに大好きです。また、ドビュッシーの『レントより遅く』は実はどのピアニストによるピアノ演奏よりもハイフェッツによるヴァイオリン演奏の方が好きだったりします。ヴァイオリンの方が異世界感が際立つと言いますか、官能的な美しさが際立ちます。
どちらも素晴らしいので、お時間ございましたら、ぜひ聴いてみてください。
かしこ
Glenn Gould
Ravel, La Valse (OFFICIAL)
『レントより遅く』ヤッシャ・ハイフェッツ演奏 / ドビュッシー作曲
Jascha Heifetz - Debussy : Waltz (La plus que lente - Valse) - 1926